LMS(学習管理システム)の使い方を詳しく解説 活用事例・豆知識付き
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「LMS(学習管理システム)はどのように使えるのか、導入した後のイメージがわかない」
新型コロナウイルスの拡大以降、多くの企業において対面型の研修からオンラインを活用した研修への転換に迫られています。その背景のもと、LMS(学習管理システム)について興味を持ち、導入に向けて検討を始めている人材開発担当者の方も多いと思いますが、実際のところLMSをどのように活用していけばいいか、今一つイメージがわかずに悩んでいる方も多い印象です。
そこで、このコラムでは、LMSの詳しい使い方から、実際に活用している企業の事例までを解説していきます。
LMSの導入検討に向けて、是非ご活用ください。
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目次
1. LMSは大きく3つのステップで使う
LMSというと、「eラーニングを配信するためのシステム」という認識の方が多いかもしれません。たしかに、LMSの代表的な機能は「eラーニング機能」ですが、近年のLMSは人材開発に関する様々な機能を有するものが多いので、使い方も多様になっています。
しかし、LMSの使い方をあえて極端に単純化すると、以下の3ステップで表すことができます。
- ユーザーを登録する
- コンテンツ(eラーニング教材等)を登録する
- ユーザーにコンテンツを配信する
この3ステップはeラーニング機能以外の学習機能を使ったとしても基本的には同様の考え方になります。集合研修やアンケートなどのコンテンツを登録し、それをユーザーと紐づけていきます。
トヨタ、双日、アサヒビールなどのLMS活用事例をご紹介⇒事例集を見てみる
ここで、知っておくと上記のステップを格段に効率化できる豆知識をご紹介します。
インポート
ユーザーは、企業においては従業員が該当します。企業規模によっては、数千人、数万人を登録する必要が出てきますが、それをLMSに一人一人手作業で登録していくのは現実的ではありません。そこで、ほとんどのLMSはインポート機能を備えており、従業員のリストなどがあれば、それをまとめて登録することができます。
システム連携
先ほどのインポート機能を活用することで、導入時に登録が問題になることは少ないのですが、実は、登録に関するネックが生まれるのは導入してからなのです。規模の大きい企業では特にですが、従業員の入退社や部署移動が頻繁にあるため、そのたびに手作業で変更を加えたり、または毎回一括インポートを行ったりすることはLMSを管理する担当者にとって大きな負担になります。
そこで、推奨したいのが人事システムとLMSを連携させることです。ほとんどの企業では、LMSは導入していなかったとしても従業員の労務管理などを行う人事システムは導入されていると思います。そのシステムとLMSを連携させることで、人事システム上で人に関するデータが変更されると、LMSのユーザー情報も自動で変更されるようになります。これによって、運用上の手間は大きく改善されます。
なお、システム連携については、実施の可否がシステムやベンダーによって異なります。ライトワークスでは、開発無しで安価に実装できる汎用プログラムも用意しており、これまでに数多くの連携実績を持っています。規模の大きい企業においては特に、LMS選定時の重要な要件として認識していただければと思います。
BPO(Business Process Outsourcing)
3つのステップに関する作業は、LMSによって簡単に行えるとはいえ、いずれも人材育成における本質的な業務ではありません。そこで、登録などの作業についてはベンダー側に委託をすることも生産性向上のための有効な手段です。ライトワークスでは、顧客をサポートする専門のチームが存在し、LMSに関する様々な業務を代行することが可能です。
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eラーニングの規格
LMSでeラーニングを実施していくうえで、注意が必要なことがあります。「LMSで展開できるeラーニング教材には、決まった規格がある」ということです。
その規格として、いま最も一般的なのは「SCORM1.2(スコーム1.2)」というものです。この規格に則っていれば、基本的にだれが作ったものでも対応したLMSに載せて配信することができます。
ここで、eラーニングを用意する方法は、大きく分けて3つあります。
(1)既にある汎用教材を購入する
(2)自社で作成する
(3)制作会社にオリジナル教材の制作を委託する
これらのいずれの方法を採用するにしても、きちんとした規格で用意する必要があります。特に、動画制作会社などに教育用動画の制作を依頼する場合など、制作会社側ではeラーニングの規格を知らないこともあるので注意が必要です(MP4データなどはそのまま配信できるLMSもあります)。なお、ライトワークスはもともとeラーニング教材の制作事業にルーツがあるため、上記の(1)~(3)の全てに対応可能です。
2. LMSの活用シーンは多種多様
繰り返しになりますが、LMSは単なるeラーニング配信システムの枠を超えて、「学習のプラットフォーム」になってきていることから、組織的に学習を行うあらゆるシーンで活用されています。
こちらに、主なシーンを列記しました。貴社に当てはまるものも、きっと見つかるのではないでしょうか。
2-1. 企業が社員に教育を行う
全社研修
コンプライアンス教育や情報セキュリティ教育など、職種や年次などに関わらず全員に学習させる場合、特に規模の大きな組織ではLMSなしでの運用は困難です。配信だけならまだしも、受講状況をきちんと把握し、履歴を残すためにはLMSは必須と言えるでしょう。
なお、グローバル展開している企業が、海外の現地法人のスタッフにも受講させたいというニーズもあるかと思います。そのような場合には、言語対応や海外への配信が可能なLMSを選定する必要があります。特に、中国にはグレートファイヤーウォールと呼ばれる検閲システムがあるため、日本からの配信が困難であるなどの障害もあります。
ライトワークスでは、大手総合商社様の依頼により100を超える国に対して同時配信した実績があり、また、中国に現地法人およびサーバーを持っているため、中国を含めたグローバルへの展開が可能です。
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新入社員研修
2020年には、新型コロナウイルスの影響で急遽新入社員研修をオンライン化した企業も多かったのではないでしょうか。ライトワークスでもそういったお問い合わせをいただきましたが、実施してみると、eラーニングならではの「何度でも復習できる」といった特性がうまく作用し、「例年よりも理解度が高まっていた」という声も聞かれました。
なお、新入社員研修は既存の社員への影響が少ないため、eラーニング/LMSの導入のきっかけにしやすい場面と言えます。
階層別研修・管理職研修
こちらも、新入社員研修同様、近年オンライン化が進んでいる印象があります。ただし、新入社員研修よりも発展的な内容であることが多いため、単にeラーニングだけでなく、eラーニングとグループワークなどを組み合わせた「ブレンディッドラーニング」を実践されている企業もあります。そういった施策を行ううえでは、研修管理機能なども備えたLMSが大いに力を発揮します。
- eラーニングで基礎知識を身につける
↓ - 対面でグループワークを行い、知識を深める
↓ - LMS上の社内SNSでさらに議論を深める
↓ - 総括として、レポートを提出する
といった一連の研修を、LMS内で全て管理することができます。
自律学習
近年、終身雇用や年功序列などのこれまでの常識が崩れ、従業員には自律的にキャリアを確立することが、そして、企業にはそれをサポートしていくことが求められるようになりました。
また、ビジネスの変化スピードがますます加速する現代においては、与えられた学習をこなすだけではなく、自ら率先して学んでいく姿勢を従業員に求める企業も多いように見受けられます。
このような背景から、「自律学習」のためのコンテンツやプラットフォームを探す企業は多く、その結果としてLMSの導入に至るケースが見受けられます。
ただし、ここで注意が必要なのは、「学習できる環境」があるだけでは、多くの人は学習しないのが実態であるということです。自律的な学習を促すためには、「システムにおける工夫」や「制度における工夫」などを駆使する必要があります。詳しくは、下記のコラムをご覧ください。
2-2. 企業が社員以外に教育を行う
パート・アルバイト
飲食やサービスなど、多くの店舗を抱える企業では、パートやアルバイトの教育は重要事項であるにもかかわらず、各店舗に任せきりになってしまっている状況もあるのではないでしょうか。そうすると、教育の質にムラが出たり、人手不足の店舗では思うように教育の時間が取れなかったりなど、様々な問題があり得ます。LMSを用いることで、全国で一律の教育をほぼ自動化して行うことができます。
子会社
多数のグループ会社で構成される大手企業においては、親会社が全体に働きかける教育もあれば、子会社が独自に行う教育もあり、施策が複雑に絡み合う状況が多々見受けられます。そのようなケースにおいて、各企業で独自のシステムを採用すると、大きな混乱を招きかねません。ライトワークスのLMS「CAREERSHIP」は、一つのシステムで、全社共通の施策を講じたり、個社独自の施策を行ったりということが簡単に実現できます。グループ全体での一貫した教育体制を構築したい場合は、その運用に耐えられるLMSを選定する必要があります。
代理店・顧客
LMSを用いて、代理店教育や顧客教育を実施するケースもあります。LMSは個人や組織向けにeラーニング教材を配信するので、他者が受けている教育内容や履歴を知ることはできません。そのため、組織を超えて、異なる企業の方々を教育していくという施策も実施できるのです。
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2-3. 教育機関が学生に教育を行う
学校
新型コロナウイルスの影響や文部科学省が唱える「GIGAスクール構想」などもあり、学校での授業のオンライン化もここに来て加速してきた印象があります。学校などでもLMSを導入するケースは多いですが、「企業向けLMS」と「学校向けLMS」は求められる要件が異なるため、それぞれに得意とするベンダーが異なります。学校関係者の方が導入を検討される場合、学校での導入実績が豊富なLMSを探すことをお勧めします。
教育サービス事業者
学校以外の教育サービス、特に大人向けの有償教育サービスにおいて、LMSが導入されるケースは多いです。サービスを継続利用していくためには、受講者一人一人の受講意欲を高めることや、あるいは受講状況やサービスに対するフィードバックなどを常に把握しておく必要がありますが、LMSを使わずにそれらを実現することは困難でしょう。
3. CAREERSHIPの活用事例
様々な企業がLMSを実際にどのように使っているのか。ライトワークスのLMS「CAREERSHIP」を活用いただいている企業の事例をいくつかご紹介します。
3-1. アサヒビール株式会社様
利用率が12倍に!マイナーな存在だったeラーニングから成長を後押しするLMSへの転換を成功させた4つの要因
アサヒビール様は2018年に「CAREERSHIP」を導入されて以降、単なるeラーニング配信システムとしてではなく、従業員が自身のキャリア形成に役立てる「キャリアポータル」として活用されています。
アサヒビール様では、20数種類の職種に対して、それぞれ3つのステージを掛け合わせた「ジョブディビジョンスキル表」というものを作成されており、「この職種でこのステージなら、このスキルが必要」という要件が体系化されています。そのジョブディビジョンスキル表に合わせて、具体的なeラーニング教材を当て込んでいくことで、各個人に対して必要な教育を提供されています。
3-2. 兼松株式会社様
企業内大学でビジネスを切り拓く経営人材の育成を目指し、「CAREERSHIP」で学びの効率化と効果向上を図る
総合商社である兼松様は「仕事は人がすべて」という考えのもと「経営人材の育成」を目指し、企業内大学「兼松ユニバーシティ」の運営に「CAREERSHIP」を活用されています。ユニバーシティ内では、複数の会社から幅広くコンテンツを取り入れ、体系的なカリキュラムを構築。複雑な履修管理も「CAREERSHIP」のアンケート機能などを活用することで、受講者、管理者の両者にとってわかりやすくかつ確実に実行しています。その結果、「CAREERSHIP」導入初年度で受講者の80%が必要単位を取得するほどの高受講率を実現されました。
3-3. サザビーリーグ様
コロナ禍で原点回帰へ。自律的に「ありたい姿」を目指す社員が半歩先の小売の価値を創る。
小売や飲食の店舗を多く持つサザビーリーグ様では、スタッフへの教育拡充とキャリア開発のためのプラットフォームの実現のため、CAREERSHIPを活用し、「S-Career Academy」を構築されました。コロナ禍を機に自律型キャリア形成プロジェクトにシフトチェンジするなど、変革の渦中にあるサザビーリーグ様ですが、ログイン率やオンラインキャリア相談件数の増加など、確実な成果を出されています。
4. まとめ
いかがでしたでしょうか?本稿ではLMSの具体的な活用方法がイメージできるよう、LMSの詳しい使い方から実際にLMSを導入している企業の事例までを紹介しました。
具体的なLMSの使い方「3ステップ」
- ユーザーを登録する
- コンテンツ(eラーニング教材等)を登録する
- ユーザーにコンテンツを配信する
この3ステップはeラーニング以外の機能を使うときも基本的には同様となります。
また、このステップを効率化する豆知識として以下4点を紹介しました。
- 従業員リストの「インポート」
- 人事システムとLMSの「連携」
- LMSの面倒な作業は「BPO(Business Process Outsourcing)」
- eラーニングの規格「SCORM1.2」
4つの豆知識を活用することで、LMSの使い方が格段に効率化します。
具体的なLMSの活用シーンとしては以下の3つがあげられます。
- 企業が社員に教育を行う
全社研修、新入社員研修、階層別研修・管理職研修、自律学習 - 企業が社員以外に教育を行う
パート・アルバイト、子会社、代理店・顧客 - 教育機関が学生に教育を行う
学校、教育サービス事業者
最後に、LMSを自社のニーズに合った形で活用されている3社をご紹介しました。
- アサヒビール株式会社では、従業員のキャリアポータルとしてLMSを活用し、20数種類の職種に対して、職種とジョブステージに合ったeラーニングを提供されています。
- 株式会社兼松では、企業内大学運営において複雑な履修管理を課題とされていましたが、LMSを活用することで、複数のベンダーから仕入れた教材をわかりやくかつ確実に管理されています。
- サザビーリーグ株式会社では、スタッフへの教育拡充とキャリア開発のためのプラットフォーム構築のためにLMSを活用され、高いログイン率とオンライン相談の増加で実績を作っています。
このように、LMSはさまざまな形での活用が可能です。機能や活用方法の多さから、複雑に感じてしまう面もあるかもしれませんが、今回ご紹介したさまざまな事例から、自社には何が必要か、どこに重点をおくか、どのような使い方をしたいのかなどを明確にしておくことで活用方法が見えてくるはずです。
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また、複雑な作業はベンダーに委託することも可能であるため、アフターフォローやサポートを含めてLMSを選定していくことが大切です。
本稿が、LMSによって実現できる自社に合った人材開発の形を検討するうえでの参考になれば幸いです。