人材育成に研修は必要?重要性や種類、研修の設計手順について解説
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人材育成は、企業にとって社員一人ひとりのスキルアップやモチベーション向上を促し、組織全体の競争力強化には不可欠です。その中でも「研修」は、社員のスキルアップやモチベーション向上のための基本的な手段として、多くの企業が採用しています。
この記事では、人材育成研修の種類や特徴、さらには効果的な研修設計の方法を5つのステップに分けて詳しく解説します。人材育成に課題を感じている人事担当者や経営幹部の方は参考にしてください。
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目次
人材育成研修の重要
人材育成研修は、組織の持続的な発展を実現するための重要な投資です。その重要性について以下のとおりまとめました。
- 人材育成研修の効果とは
- 人材育成研修の業界別事例
- 人材育成研修の種類
人材育成のゴールともいえる「理想の人材」については、こちらの記事でも詳しく解説していますので、併せて参考にしてください。
それぞれの項目について詳しく解説します。
人材育成研修の効果とは
人材育成研修は、従業員のスキル向上や離職率低下など、企業の成長を直接的に支える効果があります。具体的には以下の効果が期待できます。
- 従業員のスキルアップ:実務に直結するスキルや知識を高め、即戦力を育成。
- モチベーション向上:キャリアの展望や目標が明確になることで、従業員のやる気が向上。
- 生産性向上:業務効率が改善され、チーム全体の成果が向上。
- 顧客満足度の向上:特に接客やコミュニケーション力を強化することで、顧客満足度が向上。
- 離職率の低下:従業員が成長を実感し、企業への帰属意識が高まる。
- 競争力の強化:新しいスキルやイノベーションにより、業界内での地位を確保。
- イノベーション創出:新しい視点やスキルが組織内に広がり、革新が起こる。
- 企業価値の向上:成長する従業員と効率的な組織運営が企業全体の評価を引き上げる。
上記のように、人材育成研修の具体的な効果には、従業員のスキルアップやモチベーション向上、生産性向上などがあります。例えば、モチベーションの向上は従業員がキャリアに希望を持ち、より積極的に業務に取り組む姿勢につながるでしょう。
人材育成研修の業界別事例
人材育成研修の成功事例は、さまざまな業界や企業でみられます。ここでは、業界別の事例を紹介します。
製造業における技能伝承プログラム
製造業では、技術や技能の伝承が課題です。そのため、熟練工の技術やノウハウを、若手社員に継承するためのプログラムを導入し、人材育成と技術の維持を両立することが重視されています。
サービス業における顧客対応力強化研修
サービス業では、従業員の接客スキルやコミュニケーション能力の向上が顧客満足度に直結します。そのため、顧客満足度を上げ、リピート率増加などを上げるための研修内容が取り入れられています。
IT業界における最新技術習得研修
IT業界では、開発力向上と競争力強化が課題です。そのため、常に最新技術をキャッチアップできるよう技術研修を定期的に実施しています。
金融業界におけるコンプライアンス研修
法令遵守意識の向上とリスク管理体制の強化を目的とした研修を実施しています。その結果、企業の信頼性向上と法的リスクの理解を深めることができます。
人材育成研修の種類
人材育成研修は、目的や内容によってさまざまな種類に分類されます。以下に主要な研修の種類と特徴をまとめました。
新入社員研修
新入社員研修は、企業文化やビジョン、業務内容などを理解させ、社会人としての基礎知識やスキルを習得させることを目的としています。新入社員研修には以下のような種類があります。
企業理念・ビジョン研修 |
企業の理念やビジョン、事業内容などを理解する 組織への帰属意識を高める |
ビジネスマナー研修 |
電話対応やメールの書き方、会議の参加方法など、ビジネスシーンで必要なマナーを習得する |
職務基礎研修 |
配属部署における業務内容や必要な知識、スキルを学ぶ |
チームビルディング研修 |
チームメンバーとのコミュニケーションを深め、チームワークを向上させる |
新入社員研修は、新入社員が実務にスムーズに移行でき、活躍できるようサポートする意味合いもあります。
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中堅社員研修
中堅社員研修は、将来の幹部候補となる中堅社員を育成することが目的です。リーダーシップスキルやマネジメントスキル、専門知識などを深めます。中堅社員研修には以下のような研修があります。
リーダーシップ研修 |
部下を指導・育成するスキル チームをまとめて目標達成に導くスキル |
マネジメント研修 |
部下とのコミュニケーション、目標設定、進捗管理、評価など、マネジメントに必要なスキル |
専門知識研修 |
業務に関する専門知識を深め、より高度な業務に対応できるスキル |
問題解決能力向上研修 |
問題発見力、分析力、解決策の提案力など、問題解決に必要な能力の向上 |
専門知識の習得やマネジメントスキル向上のための研修が中心で、キャリアアップを支援するものとなっています。
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管理職研修
管理職研修は、管理職の役割や責任を理解させ、組織を効果的にマネジメントする能力を育成するのが目的です。管理職研修には以下のような種類があります。
経営戦略研修 |
企業全体の戦略を理解し、組織目標を達成するための戦略立案スキル |
人材育成研修 |
部下育成、評価、モチベーション管理など、人材育成に必要なスキル |
組織開発研修 |
組織文化の醸成、チームビルディング、コミュニケーションスキル向上など、組織全体の活性化を促進するスキル |
コンプライアンス研修 |
法令遵守の重要性、リスク管理、倫理観など |
目標設定や問題解決能力など、組織を牽引するスキルが中心です。
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人材育成研修の特徴とメリット・デメリット
人材育成研修に用いられる代表的な研修形式とそのメリット・デメリットについて解説します。
集合研修
集合研修とは、複数の参加者が集まって行う研修で、講師による講義、グループワーク、ディスカッションなどがあります。
メリット |
・講師から直接指導を受けられる ・モチベーション向上に繋がる |
デメリット |
・費用がかかる ・参加者のレベル差に対応しにくい ・研修会場の確保が難しいケースもある |
参加者同士の交流や意見交換が可能で、交流を通じて学習効果を高める効果も期待できます。
eラーニング
eラーニングとは、インターネットを利用した学習方法です。Webサイトや学習アプリを通じて、いつでもどこでも学習することができます。
メリット |
・時間や場所を選ばずに学習できる ・学習進捗状況を管理できる ・費用対効果が高い場合がある |
デメリット |
・学習者のモチベーション維持が課題 ・双方向のコミュニケーションが取りにくい ・システム導入やコンテンツ作成に費用がかかる |
学習内容や進捗状況を管理できるシステムを導入して、社内で利用する方法が一般的です。
OJT研修
OJT研修とは、On-the-Job Trainingの略で、職場で実際に業務を行いながら、先輩社員から指導を受ける研修です。実務を通してスキルや知識を習得できます。
メリット |
・実務に即したスキルを習得できる ・指導者と指導対象者の関係を構築しやすい ・費用対効果が高い |
デメリット |
・指導者のスキルにばらつきが出やすい ・指導者の負担が大きくなる可能性がある ・体系的な知識・スキルを習得しにくい場合もある |
マンツーマンで指導するため、短期間で即戦力となる人材を育成するのに効果的です。
Off-JT研修
Off-JT研修とは、Off-the-Job Trainingの略で、職場を離れて行う研修です。外部の研修機関で専門的な知識やスキルを習得したり、社内で集合研修を実施したり形式はさまざまです。
メリット |
・体系的な知識・スキルを習得できる ・最新の知識や技術を学べる ・外部講師から専門的な指導を受けられる |
デメリット |
・費用がかかりやすい ・実務と乖離した内容になりやすい ・研修期間中は業務が滞ってしまう可能性がある |
OJT研修以外のさまざまな研修は、すべてOff-JT研修ともいえます。
ケーススタディ
ケーススタディとは、実際のビジネス事例などを題材に、問題点や課題を分析し、解決策を検討する研修です。
メリット |
・問題解決能力や意思決定能力を高められる ・実践的なスキルを習得できる ・思考力を養える |
デメリット |
・事前準備に時間がかかる ・ファシリテーターのスキルが求められる ・参加者のレベル差が大きい場合、議論が偏ってしまう可能性がある |
問題解決能力や意思決定力を高めるために有効な手法といえます。
ロールプレイング
ロールプレイングとは、参加者に特定の役を演じてもらい、実際の場面を想定した練習を行う研修です。
メリット |
・コミュニケーション能力やプレゼンテーション能力を高められる ・実践的なスキルを習得できる ・緊張感の中で対応力を高められる |
デメリット |
・参加者の抵抗感がある場合がある ・評価基準が曖昧になりやすい ・時間と場所が必要となる |
コミュニケーション能力やプレゼンテーション能力を高めるためにも有効な手法といえます。
効果的な人材育成研修の設計手順5ステップ
効果的な人材育成研修を設計するための手順を5ステップで解説します。
- 人材育成における現状把握と課題の洗い出し
- 事業戦略と人材育成研修の目的と役割の決定
- 求める人材の質と量の明確化
- 従業員のスキルマップ作成とKPIの策定
- 研修内容や講師の決定
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.人材育成における現状把握と課題の洗い出し
効果的な研修設計の第一歩は、現状の把握です。組織全体の目標や課題を明確にして、人材育成がどのように貢献できるかを検討しましょう。従業員へのアンケートやインタビューを行い、分析することも有効です。
2.事業戦略と人材育成研修の目的と役割の決定
組織の事業戦略と人材育成研修の目的は、密接に関連している必要があります。そのため、事業戦略を達成するために、どのような人材が必要なのかを明確にします。
以下のようなポイントを中心に目的や役割を決めるとよいでしょう。
- 人材育成の必要性
- 研修の目的設定
- 研修の役割定義
人材研修を通して、どのような人材を育成し、組織にどのような貢献を期待するかを明確にすると、研修の設計や実地がスムーズになります。
3.求める人材の質と量の明確化
人材育成研修の目的を達成するために、研修を通して育成したい人材像を具体的に書き出す必要があります。どのようなスキルや能力を持った人材を育成したいのか、その人材が組織にどれくらいの割合で必要なのか定量的に把握しましょう。
- 求める人材像を定義する
- 研修内容と評価基準を具体化する
- 育成機関や育成方法などの計画を作成する
- どのようなスキルや知識を習得させたいかを設定する
研修の質と量のそれぞれを明確にすることで、研修内容や評価基準が具体的に設計できます。
4.従業員のスキルマップ作成とKPIの策定
従業員のスキルや知識を可視化し、育成すべきポイントを明確にするためにスキルマップを作成します。スキルマップは、従業員のスキルレベルを可視化し、育成計画を策定するための重要なツールとなるでしょう。また、研修効果を測定するため、KPIを設定します。KPIは、研修の成果を評価するための指標であり、研修の成功を測る上で重要な役割を果たします。
関連 ▶ スキルマップとは?導入のコツと作成手順、企業事例を紹介
最後に、スキルマップとKPIに基づいて、具体的な研修内容を決定します。座学だけでなく、グループワークやケーススタディなどさまざまな手法を組み合わせるとよいでしょう。講師の選定も重要です。専門知識だけでなく、受講者のモチベーションを高め、活発な議論を引き出せるような講師を選ぶのがおすすめです。
以下のような項目を決め、必要な準備を行っていきます。
- 研修内容の設計
- 講師の決定
- 教材の準備
- 研修会場の確保
- 研修スケジュール作成
研修内容には、座学、グループワーク、ロールプレイング、ケーススタディなど、様々な手法が用いられます。
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まとめ
この記事では、人材育成における研修の重要性について解説しました。それぞれの人材育成研修には、メリットとデメリットがあります。各研修の特徴やニーズを踏まえたうえで、人材育成研修を作成するためのステップを参考に、最適な研修を設計してみましょう。
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