研修の体系化にコンサルティングは必要?内容やメリット、活用のポイントを解説
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「LMS導入を機に研修体系を整理したい」
「部門ごとにバラバラの研修体系を整えたいが、リソースが足りない……」
現場を頼りに行ってきた研修を、LMSを導入して全社的に運用するとなると、体系的な計画・管理が欠かせません。
しかし、そうしたケースでは部門ごとに教材やノウハウが散在しており、教育の体系化には多くのリソースを要するもの。職種ごとの専門的な技能、明文化されていない現場の経験知など、多岐にわたるスキルを整理し適切にレベル分けする必要があるからです。
そこで選択肢の一つになるのが、プロによる研修コンサルティングです。
本記事では、研修コンサルティングが扱う内容や必要性を解説し、活用のポイントを整理します。また研修コンサルティングを利用してスキルの体系化を実施し、人材育成の生産性を高めた企業事例についても紹介しています。
自社の研修を体系化したい方、研修コンサルティングの利用を検討している方は参考にしてみてください。
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目次
研修コンサルティングとは
初めに、研修コンサルティングが果たす役割について、現代の研修を取り巻く背景も踏まえて整理しておきましょう。
人的資本経営時代に求められる研修とは
人的資本経営が重要性を増す現代、企業には、戦略的に人に投資し従業員一人一人の成長・キャリア形成を支援することが求められます。言い換えると、経営戦略と人材戦略の連動、また組織と個人が共に成長できる体制づくりが必須と言えます。
そのためには、研修も各部門任せではなく、企業として戦略的・体系的に行う必要があることは自明と言えるでしょう。
しかし現実には、体系的に研修を行っているとは言えない企業も多いようです。東京商工会議所の調査[1]では、「研修・教育訓練の年間計画や人材育成に関する中長期的な方針・計画をともに定めている」と回答した企業は約2割(22.8%)にとどまりました。対して「研修・教育訓練の年間計画や人材育成に関する中長期的な方針・計画をともに定めていない」は32.6%です。
同調査では、計画的に人材育成が行えていない傾向は小規模な企業ほど顕著であることも示されています。体系的な研修を行うには、自社のリソースだけでは難しい場合も多いことがうかがえます。
研修コンサルティングは研修体系の設計を支援するサービス
今の時代には必須とも言える研修の体系化。その設計を支援するのが、研修コンサルティングです。
似た用語に人材育成コンサルティングがあります。サービス提供会社によって幅はありますが、おおむね下記のような範囲・内容を扱います。
この中で研修の体系化に関わる部分を、本記事では研修コンサルティングとして取り上げます。研修コンサルティングの業務としては、以下が主要な内容です。
- スキル体系の調査・設計
- 研修・学習教材とのひも付け
- システムへの実装
それぞれの詳しい内容は後述します。
研修コンサルティングが求められる背景
研修の体系化を支援する研修コンサルティングは、なぜ必要とされるのでしょうか。背景には、以下のような人材育成に関わる課題が考えられます。
自律学習の仕組み化の難しさ
従業員が価値ある人材へと成長するには、上からの押し付けではなくキャリアを見据えた自律的な学びが欠かせません。しかし自律学習が成り立つには、以下のようにさまざまな障壁があります。
図:「自律的なまなび」を阻害する8つの要因
対策例からも読み取れるように、自律的な学びを実現するには、決して本人任せではなく、企業として環境を整え、仕組み化に取り組む必要があります。
しかしながら、多面的な対策を行うための社内リソースには限界があります。このような場合、外部の専門家による支援も合理的な選択肢となるでしょう。
スキルマップの必要性と作成の難しさ
経済危機や人口減少により生じた人材不足の解消は、多くの企業で喫緊の課題ではないでしょうか。また、DXの推進などにより、社内で必要とされる職種や人材像に変化が生じている企業も少なくないでしょう。
必要とする人材を確実に確保・育成するには、職務とそれに必要な能力を明示することが必須です。そこで重要なのが、職務と必要なスキル・経験などを言語化しマッピングしたスキルマップです。
スキルマップを定めることで、企業は必要な人材の確保/育成に向けてブレずに施策に取り組め、個人は目指すキャリアに向けクリアすべきことを明確にできます。ジョブ型雇用への転換や、リスキリングの推進といった動きもまた、スキルマップの必要性を後押しする背景の一つです。
一方で、スキルの洗い出し、さらに研修メニューへの落とし込みは簡単なことではありません。これまで社内教育が場当たり的・現場頼みだったような場合は特に、整理にかなりの負担を要するでしょう。また、部門や職種・個人ごとのばらつきを抑え、客観的に同じ粒度で設計するために、第三者視点での調査・検討は有効です。
こうした背景から、専門家による研修コンサルティングの必要性は高まっていると言えるでしょう。
体系的な研修メニュー作りのプロセス
次に、研修コンサルティングによる研修体系化のプロセスを紹介します。核となるスキル体系の設計は、次のような手順で進めます。
図:スキル体系の設計プロセス
Step1:目的・対象を明らかにする
スキル体系を可視化する目的、また調査範囲や対象とする従業員層、取り扱うスキルの範囲などを明らかにします。評価や人材配置といった制度と絡めて、運用方法についても検討します。
Step2:対象理解
関係者へのヒアリングやアンケートを通じて、対象の業務内容や特性などを大枠でつかみます。また職種ごとの業務プロセスを把握します。
Step3:調査
現地調査を行い、業務プロセスと必要なスキル・行動・ナレッジなどを解像度高く理解します。対象のスキルを保有した従業員へのインタビューやエスノグラフィー(フィールドワークによる行動調査)といった手法が使われます。
Step4:業務ごとのスキル洗い出し
業務ごとに、スキルを洗い出して分類し、レベル別に整理します。スキル項目は可能な限り同じ粒度で体系的に整理し、技術面だけでなくマインドやナレッジも必要に応じて組み込みます。
Step5:スキルと学習の整理
洗い出したスキルを、研修や学習教材とひも付けます。必要なスキルや知識に対し、関連する学習が直結していることで、キャリアに沿った学習計画の立案が容易になります。
Step6:システムへの落とし込み
整理したスキル項目やひも付く学習コンテンツ、その他関連するデータをシステムに登録します。システム化を前提とする場合は、あらかじめフォーマットに合った形でスキル体系を整理しておくとスムーズでしょう。
また評価など人事制度と連動させる場合は、評価フローや評価のタイミングといった運用を決めておく必要があります。実装後はPDCAを回しながら改善していきます。
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研修コンサルティングを活用するポイント
研修コンサルティングを効果的に利用するために気を付けたいポイントをまとめました。
目的・課題を明確にする
自社に必要な教育体系を構築するためには、研修を体系化する目的や解決したい課題を明確にしておきましょう。次に挙げるように、業者を選定するポイントや進め方にも大きく関わります。
目的に合った対応範囲・サービスの業者を選ぶ
コンサルティングをうたう業者は数多くあり、サービス内容や得意分野はそれぞれに異なります。自社のニーズに応えられるか検討した上で選定する必要があります。
例えば、研修メニューだけでなく人事制度の見直しも支援してほしい/LMS導入とともに研修の体系化を進めたいなど、希望に沿ったサービスを提供する業者を選びましょう。
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自社が主体となって取り組む
研修コンサルティングを依頼しても、目的に向けて研修の体系化に取り組む主体はあくまで自社です。専門家の支援を得ながら、主体的に議論を行い、最終的な意思決定を担いましょう。
専門家とはいえ外部に丸投げにしては、今後自社で運営していくにあたって実情に合わない施策を提示されてしまう恐れもあります。構築した研修体系を定着させ、改善のサイクルを回していくためにも、工程を通じて積極的に関わりノウハウを蓄積することをおすすめします。
研修コンサルティングによって研修体系を見直した企業事例
建設会社A社は、2000年代初頭の経済危機の影響を受け人材不足が深刻な現場責任者の育成を急務とし、スキルの可視化に取り組みます。
研修コンサルティングによるインタビューの中で得た大きな発見が、「業務経験の最適な蓄積」が育成に大きく影響するということです。
優れた判断を行うには、経験を通した「質の高い情報」を持っている必要があります。そうした情報を得るために必要な業務経験は何かを洗い出し、スキルを「能力」「知識」「経験」に分類して体系化しました。必要な「経験」を可視化し、そうした経験を従業員が効率的に積めるようにしたことで、育成の生産性を高めることに成功したといいます。
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まとめ
従業員のキャリア形成に向け戦略的な投資が求められる人的資本経営の時代、部門任せではない体系的な研修の必要性が高まっています。しかし研修の体系化は社内リソースだけでは難しい場合も多く、専門家による研修コンサルティングも選択肢になるでしょう。
研修コンサルティングは研修体系の設計を支援するサービスで、以下のような業務を担います。
- スキル体系の調査・設計
- 研修・学習教材とのひも付け
- システムへの実装
研修コンサルティングが求められる背景には、現代の人材育成の課題があります。個人にはキャリアを見据えた自律的な学びが求められますが、自律学習の推進には企業による多面的な支援が欠かせません。さらに、経済危機などによる人材不足、リスキリング需要の高まりやジョブ型雇用への転換などへの対応に、職務と必要なスキルを整理したスキルマップは必須とも言えます。
いずれも実現するには多くのリソースを要すること、また第三者視点での調査・設計が効果的であることから、専門家による研修コンサルティングが有効です。
研修コンサルティングの核であるスキル体系の設計は次のようなプロセスで進めます。
Step1:目的・対象を明らかにする
Step2:対象理解
Step3:調査
Step4:業務ごとのスキル洗い出し
Step5:スキルと学習の整理
Step6:システムへの落とし込み
研修コンサルティングを効果的に活用するには、まず自社の目的や課題を明らかにし、ニーズに応えられる業者を選ぶ必要があります。あくまで自社が主体となり、専門家の支援を得ながら意思決定を行いましょう。
最後に、研修コンサルティングによって研修体系を見直した企業事例を紹介しました。現場責任者の育成を急務としていた建設会社A社は、スキル可視化のためのインタビューの中で、「業務経験の最適な蓄積」が育成に大きく影響することを発見します。必要な経験を効率的に積めるようにしたことで、育成の生産性を高めることに成功しました。
スキルを整理し研修体系を整えることは、戦略的な人材育成に欠かせません。研修コンサルティング活用の検討に、本記事がお役に立てると幸いです。
[1] 東京商工会議所「研修・教育訓練、人材育成に関する調査【集計結果】」,2023年11月24日公表,P2,(閲覧日:2024年12月17日)